映画『いる』
私の映画『アイム・オール・ライト』に出演してくれている、俳優の礒部泰宏さんが制作・監督した映画『いる』が、
今月11月8日(日)13:44~福井映画祭コンペティション部門でオンライン上映されます!
https://live.fukuifilmfestival.jp/
続く11月14日(土)には9:30~田辺弁慶映画祭にてこちらもコンペティション部門でオンライン上映が決まっています。
皆様是非ごらんください!
礒部監督作品『いる』には私、久しぶりの女房役で関わっています。
女房役といっても出演の方じゃなく、監督を支える撮影監督って意味ですからね。『いる』を観ても女装をした女房役の私は出てきませんからね!悪しからず!
さて、『いる』の撮影現場を思い起こすと、まあ、楽しい思い出しかないですね。
撮影はほぼ、1シーンを1日かけて撮影をする、というスタイルでした。
たとえばロケシーンがあったら1つのロケシーンに1日かけて撮影、いくら時間が余っていても別の場所に移動して違うシーンの撮影をするということはしませんでした。
理由は簡単で、助監督もいなければ制作部もない「監督、出演者、撮影、録音」という必要最低限精鋭最強スタッフでの制作だったからです。
なにせ、俳優さんのスケジュール調整や撮影場所のコーディネート、衣装やら小道具などの段取りは監督兼主演の礒部さんがすべて一人でします。で、現場では演技もするし演出もする。
これはかなり超人的な作業です。マルチタスクすぎです。マルチタスクを通り越してカオスです。ケイオスです。
まあ、それがインディペンデント、自主ってことなんですけどね。誰もお膳立てなんかしてくれません。みんな自分で自分をお膳立てするんです。そして私の役割といえば、そんな礒部監督をそっと内助の功的女房役で支えるという役割でした。
「あんたあ、大丈夫よ、明日はきっと晴れるからさ。天気のことなんか心配しないで、明日はあんた、演出も出演もしなきゃなんだから、早く寝なさいな」
とか、
「うちのことなんて心配しなくていいんだよ。あたしはあんたが生き生きと演技をしてるの見るのが何より大好きなんだからさあ」
みたいな意味での女房役ですね。
上のようなこと、礒部さんには一言も言ってないですけどね。
さて、この映画、40分ほどの中篇映画ですが非常にたくさんの俳優さんたちが出てくるのが、その魅力の一つでもあります。撮影時は、毎回毎回、初めましての俳優さんたちと現場で直接お会いすることができ、かつその人たちの演技を見ることができるのがとても楽しかったです。どの俳優さんたちも皆独特の色を持った俳優さんたちですので、かなり贅沢なキャスティングだと思います。
で、すべての俳優と絡む礒部さん演じる主役のキャラクターの名前が「灰島」という。
色々象徴的ですね。
技術的なこと言えば映画『いる』ではほとんどライティングをしませんでした。撮影初日に気合い入れて室内シーンをライティングしたところ礒部監督から、
「ちょっと違うかも・・・」
との意見が出ましたので、それ以降ほぼアヴェイラブルライティング、室内にある電灯を使っての撮影に変更しました。結果的にこの映画にピッタリな撮影方法だったと思います。
それともう一つ、今回、映画『いる』のサウンドトラックは私の盟友、打楽器奏者、即興演奏家、作曲家の長沢哲さんが担当してくれています。
台本を読んだ段階で長沢さんがぴったりだと思い、撮影に入る前から礒部監督には内緒で勝手にオファーをしていました。
長沢氏によるミステリアスかつドラマチックなサウンドトラックにも注目してください!
映画『いる』。まあ、なかなか変な映画です・・・。
しかし何度観てもその都度毎回違う後味の残る、映画的強度が詰まった作品だと思います。そんな作品に深く関われたことは私にとってとても幸せな経験でした。
ところで、制作のかなり早い段階で、どんな撮影スタイルでいくのかと礒部監督に聞いたところ、
礒部「え?基本フィックスでしょ?それしか考えてなかったけど。・・・逆に星野さん何かあります?」
星野「・・・いや、フィックスは俺としては大歓迎なんだけど、なんでフィックスなの?」
礒部「そりゃあやっぱりじっくり腰を据えて見たいじゃないですか」
礒部泰宏。
俳優としても監督しても人としても、色々ややこしくねじくれているように見えながら不思議に柔軟性があり、且つ、基本あぐらをかいてどっしりしているという不思議な人物です。
そんな魅力的な礒部泰宏ワールドをぜひ、映画『いる』で楽しんでください!
「いる」
監督:礒部泰宏
2020年 / 39分 / ドラマ
監督・脚本:礒部泰宏 / 撮影:星野有樹 / 録音:鴻戸佑介、高根沢光 / 音楽:長沢哲
出演:礒部泰宏、牧田裕次、安藤真理、佐藤一輝、原陽子、カトウクリス、飯田芳、芦原健介、詩歩、上原武士、小澤雄志、相田淑見、高根沢光、足立智充、荒井タカシ、扇田拓也 他