フォーリー論①
フォーリー論 ①
以前書いた通りここ最近はサウンドエディットに勤しんでいる星野です。
中でもフォーリー作業に大忙しです。
フォーリーの三大要素といえばfootstep、movement、spot effectの三つになります。
footstepは単純に足音ですね。
movementは衣擦れの音、俳優の動きに伴う音と考えていいと思います。
spot effectはそれ以外の音全て、コップを置く音だったり、ライターで火をつける音だったり、背景で通り過ぎる車の音だったり、電話のベルだったり、男と女がキスをする音だったり、まあ足音、衣擦れ以外の全ての音です。
先日フォーリー作業を進めていくにつれ画面外で鳴っているはずの音の重要性に気がつきましたのでちょっと書いておきたいと思います。
ここに男と女が家に帰ってくるシーンがあります。
扉が開き二人が部屋に入ってきます。
男性の方が先にカメラからフレームアウトして部屋の奥に向かいます。
女性はコートを脱ぎながら部屋の奥にいる男性と会話をするというシーンです。
男性がフレームアウトしたのち画面に映っているのは女性のみです。
まず部屋の奥にいる画面オフの男性の声はEQとボリュームとパンで立体感を出しました。
画面の後ろから男性の声が聞こえるという単純なサウンドデザインです。
一方玄関先の女性はパンはほぼ真ん中。
女性のフォーリーとしてはコートを脱いで靴を脱いで、その他諸々のmovementとspot effectの音を録音してトラックに乗せていきます。
画面に映っているものだけを音で再現するとしたらこれでオッケーなはずですが、音のトラックを重ねていくにつれて段々不自然になっていきます。
なぜなら部屋の奥にいる男性の動きが感じられないからです。
音を聞くとただ部屋の真ん中で突っ立って女性の会話に受け答えしているように感じてしまいます。
なので撮影時にはなかった男性がマウンテンパーカーを脱ぐ音とポケットから小銭やタバコを出してそれを机の上に置く音をでっちあげて加えてみました。
途端画面に奥行きが生まれました。
私にとってはシーンが生まれた瞬間です。
ちょっとフォーリーが面白そうに思えてきたでしょ?
音を重ねていくにつれ「聞こえているはずなのに聞こえていない音」が聞こえてくるのがフォーリーの醍醐味です。
もしこれを読んで「フォーリーやってみたい!」という方がいたらいつでも私に連絡ください。
そして手伝ってください!
次回は何気にやっかいだったfootstepについて書きたいと思います。