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Studio Updates —

Studio updates.

編集日誌2

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GWから始まった映画『アイム・オール・ライト』の編集で最初につまずいたシーンは高川裕也さん、酒向芳さん、牧田裕次さん、宮崎敏行さん4人が演じる運転代行事務所での会話シーンでした。

一つの場所に集まった4人がクロストークをします。サイズやカメラ位置違いを含めて43テイクありました。全てのテイクをじっくりと見直し、まずはそのシーンのファーストカットを決めます。

映画は時間芸術ですからそのシーンがワンシーンワンカットで撮影されたものでない限り、シーンの頭に置いたカットは、その次に来るカット、さらに次へ続くカットと作業的には横へ横へと繋がっていきます。

私が使っているFCPXの編集ソフトではタイムラインは左から右へと続いていきます。フィルム編集の場合も同じでした。時間軸は左から右へと流れていきます。今書いているこの横書き文章と同じです。

各フッテージの演技は台本に沿っているので、よほど致命的なつなぎ間違いをしなければシーンが出来上がりそうなもんですが、それがそうもいかない。

シーンの途中で編集が上手くいっていないとしたらそれは前のカットに問題がある、前のカットに問題があるとしたらそれはその前のカットに問題がある、さらに・・・、と結局シーンの頭に戻って最初からやりなおすことなります。

ですので、シーンのファーストカットを選ぶ際はいつも緊張します。熟考に熟考を重ねた上で崖から飛び降りる気持ちでファーストカットをシーンの頭に置きます。次に続くのはカット尻の問題です。いま置いたカットをどこで終わらせ、次のフッテージのどの頭の部分に合わせるのか?さらには何テイク目のフッテージを使うのか?さらには、セリフで合わせるのか、アクションで合わせるのか、目線で合わせるのか・・・etc.

選択肢はほぼ無限大です。テイクが多ければさらに選択肢は増えていきます。このシーンを編集した頃はまだまだ編集作業の初期段階でした。尺で言えば映画が始まってから5分台でのシーン、手探りの状態でした。ですので、まずは単純に会話でつなげていきました。2日ほどかけて3分ほどのシーンをやっとつなぎ終え、プレビューして愕然としました。

「全然シーンが生きていない!」

全43テイクを改めて見直しても俳優の演技に何一つ問題はありません。むしろテイクごとに素晴らしい瞬間があり、ワンシーンワンカットで撮影された3分ほどのフッテージのどれもが素晴らしい。

「なんだ?なんだ?・・・なんでなんだ?」

深夜公園のベンチで文字通り自分の頭をかきむしりました。

後日、私は自分が犯していた実に初歩的な間違いに気づくことになるのですが、その話はまた次回に!

ところで皆さん最近面白い映画観ましたか?私はここ最近、観る映画観る映画のどれもが素晴らしく、逆に途方に暮れています。最初は自分が編集作業をしているため、よりヴィヴィッドに感じやすくなっているのかとも思ったのですが違いますね。ここ数年で映画は明らかに何度目かの黄金時代に入っていると思います。ディレクション、脚本、撮影、編集、演技、どれをとっても確実に進化しています。ブロックバスター映画からインディペンデント映画までクオリティがとても高い。

「負けてなるものか!」

と焦る時もありますが、芸術表現は「勝ち負け」ではないので、今しばらくは愚直にワンカットワンカットを繋ぐ作業に集中していきたいと思っています。

そんな私のここ最近のオススメはヨアキム・トリアー監督の『母の残像』です。震えましたね~。まだ観ていない方は是非!

Yuki Hoshino