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Studio Updates —

Studio updates.

本を探して

「ネットで本を買うのはもうナシ!久しぶりに本屋に行ってみよう!」

と家を出ました。

特に深い意味はありません。行き当たりばったりの単なるアイデアです。

ネットで買って自分で金払ってるクセに包みが届いた瞬間、「あれ?誰かからのプレゼント?」みたいな気分になるあの感覚も好きですけどね。

久しぶりに本屋に行くのだから「まずは雰囲気作りからだ!」と、二駅むこうの大きな本屋に行くことにしました。

目的の駅に着き駅の改札出て、昼飯を食べてなかったので、まずはパン屋でチーズがたっぷり入ったフランスパンみたいなやつとコンビニで缶ビールを買ってとりあえず公園に向かいました。

家族連れやカップルやらでごった返す公園内の池の側にベンチを見つけ、まずはそこに座って缶ビールを開けパンを貪り始めます。

公園内の池にはたくさんのボートが浮いていました。母親と娘の乗ったボート、父親と娘の乗ったボート、ジャージ姿の女子中学生達が乗ったボート、カップルたちが乗ったボート。足こぎボートを二人並んでこぐ男二人。そんなんを眺めながらパンを食べ、ビールを飲みます。

少しして隣のベンチに初老の男が座りました。

「とてもいい光景ですね」

と隣の男が俺に話しかけてきたらどうしようかと思いましたが、まあ、そんなことはなく、しばらくして横を見たら寝てました。

パンをビールで流し込みながら、ありふれた池の上の光景を「あのジャージ姿の女子中学生のケツはやたらでかいな」とか「あのカップルはこの公園の『一緒にボートに乗ったら別れる』って伝説を知らんのかな。大声で教えてあげようかな」とか「あのボート後ろ前逆に進んどるがな」などと他愛もないことを考えながら眺めていました。

パンを食べ終えビールを飲み終え、タバコを吸い終え、「雰囲気作り」なんて言ったわりには自分自身はちっともいい雰囲気にもならず仕方なく「よし、本屋に行こう!」と立ち上がりました。

これといって目的の本は決めていませんでしたが、この日は小説を買おうと決めていました。

本屋に着いて大量の本を前にした時に私がまず感じたのは便意でした。

あれはなんなんでしょうかね?

大量の本を前にした時に急に催す大なり小なりの便意は。

現前する大量の情報を前にして、身体が少しでもキャパを空けておこうと思うんですかね?とりあえず便意は無視して棚から棚へと移動しました。

「お!これ文庫になってるんだ」

「スティーヴン・キング絶賛?最近それに騙されたばっかだな」

「あ、これamazonのカートに入ったまま3年ぐらい経ってる本じゃん」

「やっぱ古典かな~」

「SFは苦手です」

「本格推理も苦手です」

「恋愛物でもないです」

「ラノベはとりあえずスルー」

などとくまなく眺めた末、海外文学ハードカバーコーナーで見つけたミランダ・ジュライの『いちばんここに似合う人』を手に取りました。ずいぶん前に知り合いが別タイトルの本を絶賛していたのを思い出したのです。著者近影を見ました。

「・・・か、かわいい」

1974年生まれ。

「俺の1こ下だ。しかも映画も撮ってるらしい」

http://www.imdb.com/title/tt0415978/?ref_=nm_knf_i1

決まりです。

一冊では寂しいので小説以外の分野も攻めることにしました。新書コーナーで面だしされている一冊の本に目がとまりました。帯に女優の蒼井優さんのポートレート写真と共に惹句が書かれていました。

「蒼井優さん大絶賛!『人生に新たな面白みを感じさせてくれた本。6回ぐらい読みました』(TBS『王様のブランチ」にて)」

「蒼井優・・・か、かわいい」

2冊を大事に抱えてレジに進みます。

「カバーはどうしますか?」

と、そばかすだらけの地味な印象のおばさんが私に聞きます。

「お願いします」

いつもは頼まないカバーを頼みました。

その時気がついたのですが、最近はあらかじめ紙カバーのフォーマットが出来ていて、その紙カバーフォーマットに表紙を差し込むだけでいいようになってるんですね。1枚の紙から「シュッ、シュッ」と折り紙をするように表紙に合わせて丁寧に畳むあの作業を見るのがわりと好きだったのですが、最近はそんな悠長なこと言ってられないようです。

「いちばんここに似合う人」¥2052「生物と無生物のあいだ」¥799 合計¥2851。

ついこの間「すんません。あなたの個人情報漏れてました。ここはひとつこれでお納め下さい」といった感じで、とある所から送られてきたQUOカード500円分を使って差額の会計を済ませました。

これといって特に面白味のある1日ではなかったですが、家を出る時にはなかった2冊の本を手に家に帰る私は、若干小走りしていたと思います。

本屋って、いいもんですね。

Yuki Hoshino