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Studio Updates —

Studio updates.

編集日誌4

映画『アイム・オール・ライト』編集作業において、初めての女性の登場人物「ナツ」。高尾祥子(たかお・さきこ)さんです。

ホテルの一室でのシーンです。

このシーンもやはり「自分の頭の中のシーンを編集で再現しようとしてしまう」ことにより最初は上手くいきませんでした。

どうもこの問題自分で思っているよりも根が深く、それは多分に私自身がこの映画の脚本を書いていることに理由があるのだと思います。

このシーンは自分の中で最初、磯部さん演じる「井上」が高尾さん演じる「ナツ」に初めて出会って、だんだん惹かれていく過程なのだと勝手に思っていました。ところがフッテージを繰り返し見ているとどうもそうではないことに気がつきました。このシーン、自分が思っていたのとは全く逆で、「ナツ」が「井上」に惹かれていくシーンだったのです。なぜその事に気がついたかといえば「ナツ」演じる高尾さんがそういうアプローチをしていたからです。それに気づかず全く逆の感情で編集を進めていたのですから上手くいくわけがありません。

高尾さんのアプローチに気づいてからは、最初は位置的距離があった二人がシーンの最後にはあと少しで触れ合えるぐらいの距離になるという流れで編集を進めることができました。

現場では二人共最初っからこの流れで演じていたんですけどね。

私が気づいていなかっただけで。

そしてシーンのラスト、磯部さんのちょっとしたアドリブがこのシーンにさらなる親密さを加えてくれました。

このシーン以降、現在進行している編集作業での重要課題として、まずはフッテージを見ながら俳優のアプローチを探すようになっていきました。現場では見れなかった芝居を編集段階でじっくり見るという過程です。俳優の言葉を理解できない映画監督が時間をかけてそれを理解し、翻訳をする過程です。

さて、今回は初めて女性の登場人物の編集でした。これまでの男性同士の登場人物の編集と何か違いはあったでしょうか。もちろんありました。でもその話はまた次回に!

ところで、同じようにホテルの一室が出てくる映画で最近チャーリ・カウフマン監督の『アマノリサ』がありましたが皆さん観ましたか?かなりダークな映画でしたが私は好きです。とても親密でエロティックなシーンがありましたね。あんなの生まれて初めて見ました。まだ観ていない方は是非!

Yuki Hoshino